くんせいには、「薫製」と「燻製」の2つの漢字表記があります。
目にすることが多いのは燻製ですが、薫製と書く場合との違いはあるのでしょうか。
燻製と薫製、それぞれの意味や違いをはじめ、燻製にまつわる表記の違いについてまとめました。
薫製と燻製に意味の違いはある?
薫製と燻製にはどのような違いがあるのかを、結論からご紹介します。
意味合いの違いはない
結論からいえば、薫製と燻製には意味合いとしての違いはありません。
どちらも「食材を燻すこと、またはその調理法で作られた料理や保存食のこと」を指し、薫製・燻製ともに同じように使うことができます。
よって、「くんせいは、薫製と燻製のどちらが正しい?」という質問には、どちらも正しい答えるのが適切です。
表現として一般的なのは「燻製」
ただし、使用されることが多い表記は、圧倒的に「燻製」です。
下記はGoogleの検索結果ですが、結果からもその差は歴然といえるでしょう。
- 薫製:約 608,000 件
- 燻製:約 23,300,000 件
(※2024年7月25日時点の検索結果です。)
燻製の方が好んで使われているのは、火へんによって煙が連想されやすくなることが関係しているかもしれませんね。
さて、ひとまずは「燻製」の表記を使っておけば間違いないということはおわかりいただけたかと思いますが、ではどんな時に「薫製」という表記が使われるのでしょうか。
ここからは、くんせいの表記が薫製と燻製の2つに分けられている理由や、薫製と燻製の細かな差をご紹介します。
薫製と燻製の違い:常用漢字の差
くんせいに、薫製と燻製の2種類の表記がある最大の理由は、「燻」の字が常用漢字ではないからでしょう。
くんせいを「薫製」や「くん製」と表現している新聞や書籍等は、単純に常用漢字ではない「燻」の使用を避けているだけだと考えられます。
薫製と燻製の違い:ニュアンスの差
薫製と燻製の間には、若干のニュアンスの差もあります。
下記は、薫と燻の漢字そのものを比較したものです。
薫
音読み:クン
訓読み:かお(る)、かおりぐさ、た(く)等
意味:かおる、よいにおいがする、いぶす等
常用漢字
漢字検定の出題範囲:準2級
JIS水準:第1水準
燻
音読み:クン
訓読み:いぶ(す)、くす(ぶる)、くゆ(らす)等
意味:いぶす、やく、しみこむ等
常用外漢字
漢字検定の出題範囲:1級
JIS水準:第2水準
薫と燻、それぞれの訓読みから個人的に連想したニュアンスは、薫製は出来上がったもの、燻製は製造過程を含んだものというイメージです。
薫製の字を好んで使われる方は、燻製品や燻煙のかぐわしさに焦点を当てている方なのかもしれませんね。
薫製と燻製の違い:調理法の差
薫製と燻製の違いは調理法にある、と考えている方もいます。
薫という字はもともと、袋に入った香草を火であぶった様子から生まれた形声文字で、よい匂いが立ち込める様子を表しています。
よって、「薫製」は食材にお香のような煙をあてる製法=冷燻のことであり、火へんを使っている「燻製」は熱燻や温燻を指している、という見解です。
ただし、薫製と燻製の字が調理法によって使い分けられると考える方はごく一部ですので、使用する際はどちらか一方に統一することをおすすめします。
冷燻・温燻・熱燻の3種の調理法が気になった方は、下記記事もぜひご覧ください。
燻製に関連するその他の表記の違い
おまけに、薫製・燻製以外の燻製にまつわる表記ゆれもご紹介します。
薫香・燻香
燻製の香りという意味をもつ「くんこう」も、薫香と燻香の2種類の表記があります。
こちらも薫製・燻製同様、はっきりと使い分けられているものではありませんが、薫香はアロマやお線香など幅広いシーンで利用される一方で、燻香は燻製にのみ使われることが多いようです。
漢字のもつイメージからは、薫香は食材の匂いを含んだ香り、燻香は燻煙そのものの香りといった印象を受けます。
燻製器・燻製機
「くんせいき」も、燻製器と燻製機の2種類の表記があります。
これは単純に、器と機の漢字の差になるので、燻製器は燻製づくりに使う木箱・鍋などの器そのもの、燻製機はそこに動力が加わった燻製の製造機といったイメージで使われることが多いようです。
薫製と燻製の違いはごくわずか
薫製と燻製には若干の違いはあれど、使い方にはほとんど変わりはありません。
常用外漢字を避けたいという場合は薫製を、そうでない場合は燻製を使っておけば間違いありませんので、ぜひ覚えておきましょう。
ちなみに、当サイトを運営する燻製屋猫松では、「燻製」「薫香」「燻製器」の字を使用しています。
業務用と自作の2つの燻製器で薫香ただよう燻製づくりを行っていますので、興味をひかれた方はぜひ燻製屋猫松の公式サイトもチェックしてみてくださいね。
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